某M先生より、
SID(米国研究皮膚科学会)は結局日本人125名がキャンセルしたとのことです。ただ、東大や愛媛大は制約がないようで参加されたようですね。各大学の対応の違いも興味深いです。
と書いたところで京大のHPを改めてチェックしてみたら、
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news5/2009/090512_1.htm
と軟化しています。
さらに、M先生より、以下のような記事を紹介してもらいました。
参考になります。
「今の状況は政府が招いたパニック」- 厚労省検疫官・木村盛世氏に聞く◆Vol.9
「大本営発表」を繰り返す厚労省、医療者からの正しい情報発信が重要
2009年5月11日 聞き手・橋本佳子(m3.com編集長)
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「新型インフルエンザで封じ込め対策は無意味。今の検疫は人権侵害と問題視され
る可能性はないのか」。今の政府の対策を強く批判するのは、現役の厚生労働省検疫
官(東京空港検疫所支所・検疫医療専門職)で、医師の木村盛世氏。WHO(世界保健機
関)が推奨していない機内検疫を中止し、国内対策に重点を置くべきだと主張する。
「厚労省は大本営発表を繰り返すだけ」と問題視する木村氏は、「医療者自らがWHOや
CDC(米国疾病対策センター)などの情報を入手し、情報発信していくことが必要」と
説く(2009年5月10日にインタビュー)。
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筑波大学医学群卒業。米国ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院疫学部修士課程
修了(MPH[;公衆衛生学修士号)。内科医として勤務後、米国CDC多施設研究プロジェ
クトコーディネーター、財団法人結核予防会、厚労省大臣官房統計情報部を経て、厚
労省検疫官。専門は感染症疫学。
——今の機内検疫などの封じ込め対策は無意味だと指摘されています。例えば、国
際的には機内検疫などは行われていません。5月7日にWHOは改めて見解を示しており、
(1)検疫に、疾患の広がりを減らす機能があるとは考えていない、(2)国際交通に
大きな影響を及ぼす方策を取っている国は、WHOに公衆衛生的理由と、その行為のエビ
デンスを提出しなければならない、としています(WHOのホームページ)。
歴史上、新型インフルエンザで封じ込め対策が有効だった例はありません。WHOは検
疫、国境封鎖には意味がないと以前から指摘しており、現在、検疫を実施しているの
は日本などごく一部の国です。WHOのほか、米保健福祉省(HHS;United States
Department of Health and Human Services)の最高責任者も務め、WHO天然痘根絶
チーム初代部長のD.A..ヘンダーソン率いるバイオディフェンスチームでも、検疫は有
効ではないとしています(Center for Biosecurityのホームページ)。また2003年の
SARSの流行時でも、検疫が有効でなかったという報告があります(CDCのホームページ)。
さらに、CDCでは、5月5日に、学校閉鎖などは推奨しないとの声明も出しています
(米保健福祉省のホームページ)。
——なぜ封じ込め対策は有効ではないのでしょうか。
インフルエンザの臨床症状は咳や発熱などですが、これらを呈する疾患は多々あ
り、新型インフルエンザに特有の症状はない上、季節性のインフルエンザと新型イン
フルエンザは症状からでは区別が付きません。また、迅速診断キットの精度も100%で
はなく、潜伏期間の問題もあります。WHOでは潜伏期間は最長1週間と言っていますの
で、3泊4日など短期間で帰国する人は検疫で把握することは難しい。また最近では、
1週間で世界各国を周るビジネスマンもいますが、今の機内検疫はまん延国(メキシ
コ、米国、カナダ)からの便が対象なので、彼らが途中でまん延国に立ち寄ったとし
ても機内検疫を受けないことになります。
インフルエンザは、日本語で言えば、流行性感冒。幸い、今回の新型インフルエン
ザは弱毒性です。にもかかわらず、政府は「日本で一人でも、流行性感冒の患者を発
生させない」という姿勢なのですから、不可能なことを求めているのであり、狂気の
沙汰としか思えません。インフルエンザ対策では、「いかに集団として免疫を獲得す
るか」を目指すことが必要です。その間、健康被害の発生を最小限に抑える、つまり
感染者の数を抑え、かつ重症者を出さないかという姿勢が重要。「一人も感染者を出
さない」のは無理なことなのです。
封じ込め対策が有効なのは、天然痘など、見ただけで診断が付き、かつワクチンが
有効であるなど感染拡大防止策が確立している疾患に限られます。
——政府は、検疫のためにサーモグラフィーを今回新たに151台購入したそうです
(5月8日の参議院厚生労働委員会での民主党・足立信也氏の質問に対する厚労省の回
答)。
従来、サーモモグラフィーは1台約180万円だったのですが、今回購入したのは、新
型インフルエンザ対応機種ということで、約300万円だったと聞いています。しかし、
臨床試験などで有効性が確かめられたのでしょうか。
また、機内検疫には国立病院の医師なども動員されていますが、それよりも国内対
策、あるいは日常診療に携わっていただくべきではないでしょうか。
機内検疫、停留措置や隔離は、検疫法に基づいて実施されていますが、検疫法は飛
行機での渡航が一般的でない時代の法律。それを現代に当てはめているわけです。先
日のBBC(英国国営放送)では、日本と同じく島国である英国のヒースロー空港と成田
空港を比較していました。ヒースロー空港では機内検疫などは実施していません。あ
の報道を観た人には、日本の検疫は異様に映ったのではないでしょうか。停留対象と
なった方の人権問題などに発展する懸念もあります。
——では今、どんな対策に力を入れるべきなのでしょうか。
先ほども言いましたように、今回の新型インフルエンザのウイルスは弱毒性ですか
ら、まずパニックにならないようにすること。今、一番、パニックに陥っているのは
政府ですが。疑い患者が出れば、「シロかクロか」と言う目で見る。それを記者会見
し、マスコミも報道する。まるで罪人のように扱っています。
そして、機内検疫などをやめ、国内の体制整備を行うことです。国民に対しては、
具合が悪かったら、自宅静養するよう呼びかける。流行性感冒の基本はホームケアで
す。また「咳エチケット」、つまり自身が咳などをしている人にはマスクの着用を徹
底させることです。でも、なぜか日本は全く症状がない方がマスクをしています。マ
スクが感染予防になるというエビデンスはないのですが。
今はパニック状態に近いですから、それを沈めるため、また新型インフルエンザの
第二波でウイルスが強毒化する可能性は否定できませんし、高病原性の鳥インフルエ
ンザの流行に備えて、発熱外来の整備を進めることも重要です。どうしても薬がほし
い患者、重症化しそうな患者にはそこに来てもらう。
「発熱外来」という発想がどこから来たのかは不明ですが、日本の医療機関の多く
は個室の診察室を持っていないので、通常の外来とは別に、新型インフルエンザの疑
い患者を診る場所は必要でしょう。例えば、国立国際医療センターなど公立病院の敷
地に、陰圧室を持つプレハブを建てる。同センターには国際医療協力局があり、発展
途上国に医師を派遣しています。国内が「非常事態」であれば、こうした医師を呼び
戻し、各地の発熱外来での診察に当たってもらえばいいわけです。彼らは感染症の患
者を見るのは専門ですから。
こうした体制を整備しないまま、今の対策を続けることは、新型インフルエンザ以
外の一般の患者、免疫力が低下した患者は「犠牲になってもいい」と言っていること
と同じです。
発熱外来などの整備が遅れるのは、法的な問題もあります。検疫法は厚労省の直轄
ですが、国内で患者が発生した後は感染症法の管轄。厚労省は単に「やれ」と言えば
いいわけで、それを実施するのは都道府県です。予算などがなければ、容易には進み
ません。
——厚労省が5月9日に事務連絡を出しました。迅速診断キットでA型陰性の場合は、
まん延国への渡航者との接触歴など、疫学的関連の有無など慎重に調べることを求め
る内容です。
これは、「今、日本の新型インフルエンザの感染者は一人もいない」という前提で
の対策でしょう。
——なぜ日本での対策は、水際対策と国内対策がアンバランスであり、国際的に見
ても特異な形になっているのでしょうか。
米国は、医療の面では問題がありますが、少なくても公衆衛生については世界のト
ップです。公衆衛生は「国防」です。つまり海外から、未知のウイルス、細菌が入っ
てきて、国内社会が混乱するのを避けるために、CDCを中心に公衆衛生に取り組んでい
るわけです。WHOも結局は各国政府の寄り合い所帯であり、CDCなどの動きを見ている
状況です。
しかし、日本には「国防」という発想がなく、公衆衛生の専門家が厚労省で指揮し
ているわけではありません。私は、ハンセン病とHIV感染、日本は過去二度も誤った感
染症対策をしてきたと思っています。今回が三度目になる懸念を持っています。
——最後に、医療者に向けて今、注意すべき点などがあれば、お願いします。
今の厚労省の発表は、太平洋戦争時の「大本営発表」と同じ。「厚労省の言うこと
は信じるな」と言いたいくらいです。医療者には知的レベルが高い人が多いですか
ら、WHOやCDCなど海外のしかるべき機関から、正しい情報を直接入手していただきた
いと思います。そして、マスコミ、国民に正しい知識を持ってもらうよう、多くの医
療者から情報発信をしていけば、今の状況が改善するのではないでしょうか。私自身
も、様々な形で情報発信していきたいと考えています。